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近年持続可能な未来のため、資源を廃棄せず繰り返し利用したり(リユース)再資源化したり(リサイクル)、廃棄物の削減や活用が注目を集めています。
廃棄物の活用方法の1つとして、私たちが普段何気なく捨てているごみが発電に活用できるのをご存知でしょうか。毎日の生活に必要なエネルギー資源を枯渇させないために、ごみ発電がどのような役割をしているか考えてみましょう。
この記事でわかること
- ごみ発電とは何か
- ごみ発電とバイオマス発電の違い
- ごみ発電のメリット・デメリット
- 日本におけるごみ発電の現状
ごみ発電(廃棄物発電)とは
ごみ発電とは、生活や産業活動から出る廃棄物を燃料に使用し、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電方式です。
廃棄物発電とも呼ばれ、家庭ごみや産業廃棄物などさまざまな種類のごみを発電に使用します。この章ではごみ発電とは何か、歴史や仕組みを詳しく解説します。
歴史
日本で最初にごみ発電の施設を導入したのは、1965年の大阪市西淀工場です。
当時日本は高度経済成長にともなって廃棄物が増加しており、廃棄物の処理問題や公害問題を解決すべく、全国的な廃棄物処理施設の整備が求められていました。
その後、昭和から平成にかけて地球温暖化や有効な資源・エネルギーの活用が注目され始め、焼却炉の余熱活用が考えられるようになります。
1992年にはごみ焼却余熱有効利用促進市町村等連絡協議会が設立され、ごみ焼却余熱の有効活用が本格化し、電力会社の余剰電力買取も整備されるようになりました。
2011年に起きた福島第一原子力発電所事故では、集中型発電システムの脆弱性が叫ばれ、ごみ発電などの自立・分散型の発電方式がさらに重要度を増しています。
仕組み
ごみ発電の仕組みは、火力発電と基本的には同じです。
火力発電が天然ガス・石油・石炭を燃料とするのに対し、ごみ発電の燃料は廃棄物です。廃棄物を焼却したときに発生する熱で高温・高圧の水蒸気を作り、その水蒸気の圧力でタービンを回して発電します。
近年では、ごみ発電にガスタービン発電を組み合わせた、スーパーごみ発電も注目を集めています。従来のごみ発電では、ボイラーが腐食しないよう蒸気温度を低めに設定しているため、発電効率は低く10%前後です。
対してスーパーごみ発電は、ボイラーで発生した水蒸気をガスタービンで再度加熱し、蒸気温度を高めて25%以上の発電効率を達成しています。
ごみ発電のプロセスでは、焼却によって生じる熱エネルギーを有効に利用しています。この熱エネルギーの利用方法は、熱回収技術に基づいており、廃棄物処理と同時に発電を行うことで、より効率的なエネルギー利用が可能になります。
この熱回収について詳しくは、以下の記事をご覧ください。
ごみ発電(廃棄物発電)とバイオマス発電との違い
バイオマス発電とは、生物由来の資源(バイオマス)を燃料に使用し、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電方式です。
木材や農作物の残渣など、再生可能な有機物質を焼却したときに発生する水蒸気やガスでタービンを回して発電します。
この章ではごみ発電とバイオマス発電がどのように違うのか、4つのポイントを解説します。
燃料が違う
ごみ発電は、一般的な家庭ゴミや産業廃棄物を燃料にしていますが、バイオマス発電の燃料は生物由来の資源(バイオマス)です。
そもそもバイオマスとは、生物が生きていく過程で自然に生まれる再生可能な有機物質で、化石資源は含まれません。
廃棄物系バイオマス・未利用バイオマス・資源作物の3種類があり、廃棄物系バイオマスは家畜の糞や廃木材、下水汚泥などです。
未利用バイオマスは稲わらやもみがら、林地残材など、未使用の資源を指します。資源作物は、エネルギーや製品の製造を目的として作られた、糖質資源や油脂資源です。
環境への影響が違う
ごみ発電は不適切な処理をおこなうと、ダイオキシンなどの有害物質を発生させる可能性があります。
バイオマス発電は、カーボンニュートラルの性質を持つバイオマスを燃料としているため、大気中の二酸化炭素量を増加させません。
カーボンニュートラルとは、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量から吸収量を差し引いた合計が実質ゼロになることです。
バイオマスは焼却するときに二酸化炭素を排出しますが、成長の過程で二酸化炭素を吸収しているため、カーボンニュートラルな資源とされています。
発電コストが違う
ごみ発電は本来処分する廃棄物を燃料としているため、天然ガス・石油・石炭を燃料とする火力発電と比べて、資源のコスト削減が見込めます。
一方のバイオマス発電は、使用する資源の種類や調達場所によってコストが異なり、必ずしもコスト削減が見込めるとは限りません。
例えば木材を使用するとき、海外輸入したり効率よく燃焼できるよう加工したり、発電に利用するまでの過程で高額な費用がかかる場合があります。
収集・運搬・保管にコストがかかりすぎると、発電コストは他の発電方式よりも高くなり、長期的な活用が難しくなるでしょう。
持続の可能性が違う(持続可能性)
ごみ発電は、本来処分する廃棄物を有効活用でき、環境保護に貢献しています。しかし、ごみ発電に使用できる廃棄物には限りがあり、バイオマス発電と比べると長期的な視点での持続可能性は低いと予測できます。
その点バイオマス発電で使用するバイオマスは、自然界に常に存在する再生可能なエネルギー源で、枯渇する心配がありません。
使用できる資源の種類も豊富で、火力発電やごみ発電などと比べて持続可能性が高い発電方式です。
ごみ発電(廃棄物発電)のメリット
ごみ発電には、以下のようなメリットがあります。
- 廃棄物の有効活用
- 化石燃料の使用量削減
- 地産地消
- エネルギーの安定供給
- ごみ埋立地の負担権限
なぜごみ発電が注目されているのか、ごみ発電のメリットを理解しましょう。
廃棄物の有効活用
ごみ発電は、廃棄物を焼却しながら発電を行うシステムで、通常の廃棄物処理と比較して、廃棄物をエネルギー資源として有効活用する点が大きなメリットです。
通常のごみ焼却施設では、廃棄物を焼却する際に発生する熱を利用せずに捨ててしまうことが多いですが、これはエネルギーの無駄遣いと言えます。
一方で、ごみ発電では、廃棄物を燃焼させる過程で発生する熱を利用して蒸気を発生させ、それを動力源として発電を行います。このプロセスにより、廃棄物処理と同時に電力を生産でき、エネルギーの有効活用が可能になります。
リデュース、リユース、リサイクルと並んで、ごみ発電はリカバリー(回収・再利用)の一形態として、資源の有効活用を図る手段の一つとされています。
化石燃料の使用量削減
廃棄物を使用したごみ発電は、枯渇する可能性がある化石燃料の使用量を減らせるメリットがあります。
日本の電力の半分以上を担う火力発電では、燃料に天然ガス・石油・石炭などの化石燃料を使用します。
化石燃料は何億年も前の動植物が年月をかけて体積・加圧され、化石化してできたもので、バイオマスのような再生可能な有機物質ではありません。
また、化石燃料は燃焼時に地球温暖化の原因である二酸化炭素を排出します。ごみ発電は有限な化石燃料の使用量を減らせるだけでなく、二酸化炭素の排出量の削減効果もあります。
地産地消
地産地消とは、ある土地で生産したものを、その生産地で消費する活動です。現状日本は、火力発電で使用する化石燃料など、エネルギー源の多くを輸入に頼っています。
一方ごみ発電の燃料である廃棄物は国内で調達できます。ごみ発電は、日本で生産した廃棄物で生み出した電力を日本で消費できるため、エネルギーの地産地消を実現できる発電方式です。
各都市の焼却施設でごみ発電を活用すれば、輸入に頼らず各都市でエネルギーの地産地消を実現できるでしょう。
エネルギーの安定供給
化石燃料を使用しない発電方式には、ごみ発電の他にも太陽光発電・風力発電・地熱発電などがあります。
ただし、自然の力を資源とした発電方式は天候や季節に左右されるため、安定したエネルギー供給ができない点がデメリットです。
それに対してごみ発電の資源は、生活するうえで毎日発生する廃棄物です。自然の力を資源とした発電方式と異なり、天候や季節に左右されず、安定してエネルギーを供給できます。
ゴミ埋立地(最終処分場)の負担軽減
現状日本では、再資源化やリサイクルが難しい廃棄物を埋め立て処分しています。しかし、ごみの排出量に対して国土の狭い日本の埋立地は減り続けており、このままでは将来的に不足する可能性があります。
埋立地が不足した場合、廃棄物の処分にかかるコストが高くなったり不法投棄などの不適切な処分をおこなう人が増えたりするのです。
ごみ発電で廃棄物を焼却すれば、埋め立てる廃棄物の量を大幅に減らせます。ごみ発電はエネルギーや資源の面だけでなく、ごみ埋立地の負担を軽減するなど、破棄物処分の面でもメリットがある方法です。
ごみ発電(廃棄物発電)の問題点・デメリット
ごみ発電はメリットの多い発電方式ですが、現在の日本では以下のような問題点・デメリットもあります。
- 有害化学物質排出のリスク
- 発電効率が悪い
この章では、どのような問題点・デメリットが、日本でのごみ発電普及を妨げているかを詳しく解説します。
有害化学物質排出のリスク
ごみ発電は、廃棄物を焼却するときに、ダイオキシンなどの有害ガスが発生する可能性がある点がデメリットです。
現代のごみ発電施設では、バグフィルターや洗浄システムなどによる、高度な排出ガス処理技術が利用されています。
しかし、排出ガス処理技術には有害物質の排出量を減少させる効果がありますが、リスクが完全になくなったわけではありません。
ごみ発電施設の設計・運用方法や廃棄物の種類によっては、依然として有害物質が発生する可能性があります。
発電効率が悪い
ごみ発電のデメリットの1つが、収集・運搬・管理にコストがかかり、発電効率が悪い点です。
ごみ発電の発電効率は、ごみ発電施設の技術や廃棄物の種類によって異なりますが、化石燃料を使用した火力発電と比べると低い傾向にあります。
また、日本のごみ発電施設は多くが小規模で、大量の電力を発電できる大規模な施設が少ない点も発電効率が低い理由の1つです。
化石燃料の使用量削減など、多くのメリットがある一方で、コストや発電効率がごみ発電普及のネックになっています。
日本のごみ発電(廃棄物発電)の現状
現状発電効率の悪さや施設の建設費用などがネックになり、海外と比べて日本のごみ発電はそれほど普及していません。
しかし、廃棄物を有効活用でき、化石燃料の使用料を削減できるごみ発電の重要性は年々増しています。
環境省では廃棄物処理施設整備計画を5年ごとに定め、発電施設を含むエネルギー回収型廃棄物処理施設に対する支援として、循環型社会形成推進交付金を提供しています。
3R(リデュース・リユース・リサイクル)などと共に、循環型社会の形成を目指す1つの方法としてさまざまな対策がなされており、近い将来には今より普及が進むでしょう。
まとめ
ごみ発電(廃棄物発電)は、家庭や産業から出る廃棄物を利用して電力を生成する環境に優しい発電方法です。
廃棄物の有効活用、化石燃料の使用量削減、地産地消の促進、エネルギーの安定供給、及びごみ埋立地の負担軽減など、多くのメリットを持っています。
一方で、ダイオキシンなど有害物質の排出リスクや発電効率の問題も存在します。バイオマス発電と比較して、ごみ発電は再生可能な資源ではなく、廃棄物を燃料として使用する点が大きな違いです。
日本では、ごみ発電の普及に向けた取り組みが進められており、今後も技術の改善と普及が期待されます。