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高齢化や核家族化が進む現代では、身寄りのない人の孤独死は増加する傾向にあり、深刻な社会問題の1つです。
身寄りのない状態で死亡したら、火葬や葬儀の手配から部屋の片付けまで、どうなってしまうのか不安を抱えている方もいるでしょう。
また、身寄りのない人に部屋を貸している場合には、もしものときにどうしたらよいかわからないオーナーもいるのではないでしょうか。この記事ではそういった疑問を解決すべく解説していきます。
この記事でわかること
- 身寄りのない人が亡くなったときの手続きや必要なこと
- 身寄りのない人が亡くなった時の荷物はどうすればいよいのか
- 自分が身寄りがない場合に生前にできることは何か
身寄りのない人が死んだ後の手続き
一人暮らしで身寄りのない人が亡くなったら、どのような手続きをすればよいのでしょうか。孤独死の手続きとして、一般的な流れを解説します。
遺体発見者が警察に通報する
亡くなっているのか定かではない場合は、すぐに救急車を呼びましょう。
遺体の状態から、明らかに死亡していると判断できる場合は、警察に通報します。警察が現場検証や家宅捜索をおこなう間は、部外者の立ち入りはできません。
警察が親族や相続人を探す
遺体は警察が引き取り、公的書類などを調べて遺族や相続人を探します。
連絡がつけば死亡後の手続きや遺品整理は当事者がおこないますが、見つからないケースも少なくありません。
見つかった場合でも相続を放棄されると、相続関係が明確になるまで手続きが進められないため、長期化するケースがほとんどです。
見つからない場合は自治体が火葬・埋葬する
遺体の引き取り先が見つからないときは、亡くなった土地の自治体が遺体を引き取り、火葬や埋葬をおこないます。故人と付き合いのあった人や近隣住民が葬儀をおこなってくれる場合もあります。
自治体が火葬・埋葬をおこなう場合、その費用を負担するのは自治体です。故人に財産があれば、いったん自治体が立て替え、後日財産から支払われます。
身寄りのない人が死んだときに必要なこと
親戚や相続人がいない人が亡くなったとき、葬儀の手配や財産の管理、公共料金などの契約解除や残された荷物の整理が必要です。身寄りのない人の死亡後に必要なことを解説します。
葬儀の手配と財産の管理
身寄りのない人が亡くなって引き取り先がない場合は、自治体が最低限の簡素な葬儀をおこないます。故人の財産で費用がまかなえないときは、葬祭費補助金制度や葬祭扶助制度の利用が可能です。
どちらも一定の条件を満たせば葬儀・埋葬費用の給付が受けられますが、支給条件や支給される金額が異なるため、自治体や保険の加入先に確認しましょう。財産がある場合は、葬儀費用に充てた残りは国庫に入ります。
公共料金などの契約の解除
電気や水道、ガスなどの公共料金の契約解除は、当事者以外はおこなえないのが原則です。死亡により支払いが止まり滞納が続くと、支払先から一方的に契約が解除されます。
相続財産清算人や死後事務委任契約の受任者であれば、故人の代わりに契約の解除が可能です。
遺品整理や原状回復
賃貸物件の場合、原状回復は貸主の負担になる場合がほとんどです。
遺品整理は、通常であれば遺族や連帯保証人がおこないますが、見つからないときは相続財産清算人や死後事務委任契約の受任者がおこないます。
身寄りのない人が生前にできること
身寄りのない人が生前にできることは、以下のとおりです。
- 遺言状を用意する
- 死後事務委任契約を結ぶ
相続する人がいないと財産は最終的に国庫に入りますが、遺言状を作っておけば、親族以外の知人やお世話になった第三者にも財産を譲れます。
親族や相続人がいないために手続きがスムーズに進まず、長期にわたって放置されるケースも少なくありません。「死後事務委任契約」とは、葬儀や遺品整理など死亡後の手続きを代理でしてもらうように委託する契約です。(死後事務委託契約とも言います。)
行政書士・司法書士・弁護士などの専門家や、信頼できる友人・知人を受任者に選びましょう。死亡届の提出や葬儀の手続き、遺品整理など、委任する内容は契約時に決められます。
身寄りのない人が生前にできる準備については以下も参考にしてくださいね。
参考:おひとり様のお墓問題…身寄りのない方に必要な「自分じまい」の準備とは?|みんなが選んだ終活
自分自身や親が亡くなる前に準備しておくべきことも合わせてご覧ください。
賃貸・マンションで死んだ場合の遺品整理
身寄りのない人がアパート・マンションといった賃貸物件で死亡すると、残された荷物はどうなるのでしょうか。
相続人が見つからない場合と故人が生活保護を受けていた場合で、貸主ができる対応を解説します。
相続人が見つからない場合
連帯保証人や相続人が遺品整理をおこなうのが基本ですが、どちらもいないケースもあるでしょう。原則として遺品の整理や処分は相続人がおこなうと定められているため、行政では対応してもらえません。
相続人の調査や遺品の保管は自治体に依頼できる場合もありますが、対応してもらえない可能性もあるので注意が必要です。
相続人がいない場合は家庭裁判所に申し立てをして、相続財産清算人を選任してもらいます。ただし、故人に財産がない場合は選任する費用がまかなえないため、申し立てをする意味がありません。
相続財産清算人の申し立てをおこなわない場合は、貸主の負担になるケースもあります。
生活保護受給者だった場合
生活保護の受給者は行政から経済援助を受けて生活しているため、死亡後の手続きも行政が支援してくれるのではないかと考えるオーナーもいるでしょう。
自治体から葬祭扶助として最低限の葬祭費は支給されますが、遺品整理に生活保護費は使えません。相続人や連帯保証人がいない場合は、貸主が遺品整理をおこなうケースがほとんどです。
持ち家で死んだ場合の遺品整理
持ち家や財産を相続する人がいない場合は、相続財産清算人を選任する必要があります。遺体は警察が引き取り、火葬・埋葬は自治体がおこないますが、持ち家や遺品の整理をおこなうのは相続財産清算人です。
家庭裁判所に選任の申し立てをおこなうには一定の条件があり、申し立てをおこなわない場合は持ち家や遺品は放置されたままになる可能性もあります。
相続財産清算人が財産を換金して、必要な支払いを済ませたあとに残った現金は、裁判所の収入として国庫に帰属します。
持ち家や土地の国庫への引き継ぎ窓口は、裁判所ではなく財務省の財務局です。不動産の国庫への引き取りは敬遠される傾向にあり、現金化して納入するように進められますが、難しい場合は不動産のままでも帰属できます。
身寄りのない人が死んだら遺品を片付けるのは誰?
遺品の片付けや処分は、相続人以外の第三者が勝手にできません。
アパート・マンションなどの賃貸物件の貸主であっても同様で、処分後に相続人があらわれて訴訟を起こされる可能性もあります。身寄りのない人の遺品整理をおこなえるのは、法定相続人と相続財産清算人です。
法定相続人
身寄りのない人に財産がある場合、原則的に法定相続人が相続しますが、相続する権利と同時に遺品整理をおこなう義務も発生します。
民法に定められている法定相続人とは、故人の配偶者・子・父母や祖父母などの直系尊属です。身寄りがないと思われても、戸籍謄本などで不在を確定する必要があります。
相続財産清算人
相続財産清算人とは、家庭裁判所から選任され、相続人の代わりに故人の財産を管理・精算をおこなう人のことです。
令和5年4月に民法が改正されて、「相続財産管理人」から名称が変更されました。権利関係の確定に必要な期間が短縮されるなどの変更点はありますが、権限や役割はほとんど同じです。
相続財産清算人であっても故人の財産を自由に処分ができるわけではありません。家庭裁判所の許可を得ながら進めるため、相当な時間がかかります。
相続財産清算人の選任を申し立てできる人は、利害関係人と検察官です。アパート・マンションの貸主は借主に対する債権者とみなされるため、申し立てができます。
しかし、裁判所に納める予納金などの費用がかかり、多くの書類を必要とする大変な手続きなので、素人の方には難しいでしょう。
まとめ
身寄りのない人が亡くなった場合、警察や自治体が遺体の引き取りや火葬・埋葬を担当し、相続人が見つからない場合は相続財産清算人が財産の管理や遺品の整理を行います。
しかし、これらのプロセスは複雑で時間がかかり、特に相続人がいない場合には多くの問題が生じます。
アパートやマンションの賃貸物件の貸主でも勝手に亡くなった方の遺品処分は出来ない為、遺品整理や不動産の管理に関して、法的な支援や自治体のサポートを理解し活用する必要があります。
また、財産管理や残された荷物の処分が周囲の負担となるため、身寄りがない方は遺言状や死後事務委任契約などの準備を生前にしておきましょう。