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ゴミの日に集積所に出せば回収してもらえるのが当たり前になっていますが、将来的に埋立地がいっぱいになり使えなくなるおそれがあります。
昔に比べて生活が豊かになり、食べきれない食料や使い捨てにできる便利な商品も増えて、その分ゴミの排出量も膨大な量になっているからです。
ゴミを埋め立てられなくなったら、私たちの生活はどうなってしまうのでしょうか。埋立地がなくなるまでどのくらいの猶予があるのかに加えて、今からできる解決策も解説します。
この記事でわかること
- 将来、埋立地がなくなった時のゴミ問題について
- 日本の埋立地の現状
- ゴミの埋立地は増やせるのかについて
- ゴミ問題の将来的な解決策
ゴミ埋立地とは?
ゴミ埋立地、別名「最終処分場」は、リサイクルや再資源化が困難なゴミを処理する施設です。
多くの人が「夢の島」という名前を聞いたことがあるでしょう。夢の島は昭和32年にゴミの埋立地として始まり、当初は焼却されずそのまま投棄されていましたが、今では緑豊かな公園に変貌しています。
現代の埋立地では、ゴミを種類別に処理し、焼却により量を減らした後、無害化や安定化の処理を行っています。このような進歩により、ゴミ問題への対策が進んでいることがわかります。
埋立地がなくなったら将来のゴミ問題はどうなる?
現在、ゴミを埋めるための埋立地(最終処分場)が次々と減っており、そこに収めることができるゴミの量もどんどん少なくなっています。
この状況が続くと近い将来、ゴミ埋立地は満杯になり、使用できなくなる可能性が高いです。埋立地がなくなると、私たちの生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。
「どうやってゴミを処理するのか」、「ゴミを減らすためにどのような対策が必要なのか」などを今から真剣に考える必要があります。
処分にかかる費用が高くなる
ゴミの埋立地が満杯になると、ゴミ処分にかかるコストはこれまで以上に高くなるでしょう。
埋立地が利用できなくなると、他の処分場へゴミを持ち込む必要があります。これにより、他の地域への運搬コストが増加する可能性があります。
ゴミ処分には税金が使われているため、全体的な財政負担が大きくなるとともに、ゴミの量や種類に応じて個人に課される負担も増えることが予想されます。
不法投棄が増える
ゴミの処分が手間と費用のかかるものになると、不法投棄するケースが増加する恐れがあります。
正規の手段をとらず、無断でゴミ集積所に放置したり、人目につかない私有地に不法に捨てたりする行為が増えることが予想されます。
既に、回収ルールを守らないゴミが放置される現象は見られていますが、ゴミ処分の条件がさらに厳しくなれば、不法投棄がさらに増える可能性が高いです。
環境が汚染される
ゴミの処分コストが増加すると、適切な処理を行わない個人や業者が増え環境汚染のリスクが高まるでしょう。
勝手にゴミを燃やす行為は、健康に害を及ぼすダイオキシンの発生の原因となります。また、不適切に埋め立てられたゴミは土壌や水質を汚染する危険があります。
さらに、街中に処理されないゴミが溜まることで、不衛生な状況が生じる可能性があります。
ゴミ埋立地がなくなるまでどのくらい?埋立地の現状とは?
ゴミ埋立地がいっぱいになり使えなくなるまで、あとどのくらいの期間が残されているのでしょうか。
現在のゴミの排出量と処理状況から、将来的に厳しく何らかの対策が必要であると判断できます。
ゴミ埋立地の残余年数は23.5年
環境省の令和3年度の報道発表資料「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和3年度)について」によると、現在のゴミ埋立地(最終処分場)の残余年数は23.5年とされています。
残余容量は9,845万立方メートルで、これは前年度に比べて1.4%の減少を示しています。この減少の原因には、経済の低迷や人口減少、リサイクルやゴミ処理技術の向上などが考えられます。
令和2年度には残余年数が22.4年と報告されており、残余年数は徐々に伸びているものの、ゴミの量とゴミ埋立地(最終処分場)の数は今後も減少する傾向にあるため、将来的にはより厳しい状況が予想されます。
ゴミの排出量は東京ドーム約110杯分
環境省の報道発表資料「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和3年度)について」によると、令和3年度のゴミの総排出量は4,095万トンで、これは東京ドーム約110杯分に相当します。
これは令和2年度の4,167万トンから1.7%減少しているものの、問題は根本的に解決していません。
焼却技術の進歩によりゴミの量は減少していますが、ゴミ埋立地(最終処分場)の残余容量は9,845万立方メートル、つまり東京ドーム約79杯分しかないのが現状です。
したがって、今後はさらにゴミを減らすための工夫が求められています。
ゴミの処理状況は年々厳しくなっている
日本ではこれまで、古紙やペットボトルなどのリサイクル可能なゴミを資源と見なし、海外に輸出してきました。しかし、中国が資源ゴミの輸入を禁止し、東南アジア各国も規制を強化したため、資源ゴミの輸出が困難になっています。
日本は国土が狭く、ゴミを最小限に抑えて埋め立てる必要があります。主要なゴミ処理方法は焼却ですが、リサイクルに対する意識の低さや体系的な仕組みの不足から、先進国の中ではリサイクル率が低い状況にあります。
また、日本国内でのリサイクル施設の不足やリサイクル技術の遅れも、ゴミ処理の問題を複雑化しています。そのため資源の有効活用が困難になり、環境への影響も懸念されています。
国内リサイクルの促進と技術革新、そして市民意識の向上が急務であることが明らかです。
ゴミ埋立地は増やせる?
ゴミ埋立地(最終処分場)を増やすことは非常に困難です。
現状を維持すると、ゴミ埋立地は将来的に使用不可能になる恐れがあるため、新たな埋立地の確保が理想的ですが、土地の確保、周辺住民の理解、環境問題などの多くの制約があり実現は難しいと言えます。
ゴミ埋立地を作るためには、長期間にわたって使用できる広い土地が必要ですが、特に都心部などの密集地域では土地の確保が難しいでしょう。
また、適切な土地が見つかったとしても、周辺住民の理解を得る必要がありますし、環境への影響を最小限に抑えるための配慮も必要です。
ゴミ問題の将来的な解決策とは?
ゴミ埋立地が将来的になくなる問題を解決するにはどうしたらよいのでしょうか。埋立地の寿命を延ばすために、私たちにできる方法と、処分場でおこなわれている対策を解説します。
3Rの徹底をする
一人ひとりがリデュース(減らす)、リユース(再利用する)、リサイクル(再生利用する)の3Rを徹底することで、ゴミを減らしゴミ埋立地(最終処分場)の残余年数を延ばすことができます。
リデュース(Reduce) | 不要なゴミを生み出さないこと |
リユース(Reuse) | ゴミとなるものを再利用すること |
リサイクル(Recycle) | ゴミを新たな資源として活用すること |
身近な例を挙げると、マイボトルやエコバッグの活用は、使い捨て製品によるゴミを減らす良い例です。繰り返し使用できるリターナブル瓶や容器は、使用後もゴミにせず再利用可能です。
牛乳パックやペットボトルなどを分別して回収すれば、新たな資源として活用できます。
焼却場からでる灰を資源化する
埋立地の寿命を延ばすための一つの方法として、焼却場から出る灰の資源化があります。
この方法には以下のような具体的な対策があります。
- 焼却灰をエコセメントとして再利用する。
- 焼却灰から石状のスラグを作り、建築材料などに利用する。
- 焼却灰から人工砂を作り、建設資材として活用する。
これらの方法は廃棄物を減少させるだけでなく、新たな資源を創出することにも繋がります。しかし灰を再資源化する過程では、製造コストや灰を資源化する施設への運搬コストがかかるという難点があります。
また、焼却灰には有害な重金属などが含まれていることもあり、その処理には十分な注意が必要です。そのため根本的な解決策としては、ゴミをいかに減らすかという点が最も重要になります。
熱回収型焼却施設を利用する
熱回収を伴う焼却施設を利用することで、廃棄物の量を減らしながら同時にエネルギーを回収することが可能です。
このエネルギーは電力や熱として利用され、廃棄物処理の効率を向上させるとともに、埋立地への依存を減らすことができます。
熱回収型焼却施設では、廃棄物の燃焼によって発生した熱を利用して蒸気や電力を生産します。これにより、焼却プロセスそのものがエネルギー生産の源となり、化石燃料の使用を減らすことにも貢献します。
しかし、燃焼による大気汚染物質の排出やダイオキシンなどの有害物質の管理が必要です。したがって、熱回収型焼却施設の利用は、適切な排出ガス処理技術と併用することが重要となります。
コンポスティングを推進する
コンポスティングとは、生ゴミや食べ残しなどの生物分解性のある廃棄物を自然分解させて堆肥(コンポスト)に変えるプロセスです。
この方法を取り入れることで、有機廃棄物の埋立地への搬入量を減らすことができます。コンポスティングは、家庭での小規模な取り組みから、農業地域や公共施設での大規模な実施まで幅広く行えます。
コンポスティングには、廃棄物の量を減らすだけでなく、生成された堆肥を農業資材として再利用できるというメリットもあります。これにより化学肥料の使用を減らし、土壌の健康を改善することも可能です。
しかし、コンポスティングには適切な管理が必要で、不適切な処理は悪臭の原因となったり、害虫を引き寄せたりすることがあります。そのため、正しい方法での実施と継続的な管理が重要です。
まとめ:埋め立て地の状況とゴミ削減の必要性を理解しよう
環境省の報告によると、日本のゴミ埋立地は残り23.5年と推定されており、廃棄物の処理に関しては深刻な状況に直面しています。
排出量の減少と処理技術の進歩により、残余年数は若干延びているものの、埋立地の残余容量は確実に減少しています。このままでは、ゴミの処分方法に大きな変化が必要となり、不法投棄や環境汚染のリスクも高まります。
この問題に対処するためには、リデュース、リユース、リサイクルの3Rを徹底し、コンポスティングのような廃棄物処理方法の推進を含む、一人ひとりのゴミを減らす努力が必要です。